コルクか、プラスチックか、スクリューキャップか・・・

いつもアルポルトカフェ日本橋高島屋店をご愛顧下さいまして、誠にありがとうございます。


表題は皆さんご存知のワインボトルの栓のことです。ワインの栓について、これまで色々な議論がなされ、様々な研究開発がなされてきました。というのは、ワインはどれだけ高級なものであろうと、またどれだけ温度管理をしっかりしていようと、コルクによって痛んでしまうことがあったからです。

これはコルクティント(ブショネ)と言い、ワインやコルクオークの持つフェノール類と塩素類とカビによる化学反応によって、トニクロロアニソールという物質が生じ、これによってワインがかびや埃臭くなったり、ワインの本来の味や香りが汚染されてしまうと考えられています。

またそのほか、コルク栓は、あまり慣れていない人が抜こうとすると、途中で壊れて(通称中折れ)、その屑がワインの中に入ってしまうという悲劇を齎すなど、見栄えは好いものの、マイナス面が多いことから問題視されてきました。

そこで、伝統にとらわれないニューワールドのワイナリー(特にオーストラリアとニュージーランド)では、プラスティック製のキャップ、或いはジュースの栓と同様のスクリューキャップを採用しているところが多くあります。

しかしながら、プラスティック製のキャップはコルクよりも硬いので、抜きにくく、また2年以上の保管で液漏れや、プラスティック成分の溶解などの問題も報告されており、熟成タイプのワインに使用するにはまだまだ改善が必要とされています。

一方、もう一つの救世主であるスクリューキャップは、何と言っても、ワインの栓を抜くのに道具がいらないということもあり、大変な人気となっています。ですが、あまりにもワインが安っぽく見えるという点からか、ヨーロッパの伝統的なワイナリーではなかなか積極的な動きはないようです。

正直に言うと、私も店ではスクリューキャップはもちろん、できるだけプラスティックのキャップのワインは扱わないようにしています。理由は、非常に根本的なことなのですが、ワインボトルの栓というのは、単なる蓋ではなく、自動車のエンジンオイルの点検をするゲージと同じ役割を担っていると考えられ、コルクに染みたワインの匂いによって、我々はそのワインが正常であるかどうかを確認することができるからです。


なぜなら、コルクであろうとプラスティックであろうとスクリューキャップであろうと、王冠であろうとワインだけは確実に不良品が混じっていると経験的に知っているからです。

またコルクは案外多くの情報を提供してくれます。たとえば摂氏30度を超える場所に数時間ワインを放置しただけでワインは膨張して、コルクと瓶の隙間から噴出してきます。また途中で折れてぼろぼろになってしまうコルクは多くの場合、ワインが立てたまま保管されていたことを知らせてくれます。

我々のようにレストランでワインを扱う者は、瓶詰め出荷後3年以上のワインでない限り、お客様がお買い上げになったワインの味見をすることは致しません。コルクの匂いを嗅げば、味見をしなくても済むようになっているからです。

味見をするのは、熟成がどのように進んでいるかを調べるため、あくまで勉強のために、お客様の好意に縋ってさせていただくだけです。

ソムリエというのは美味しいワインを紹介することではなく、不良品を発見して、お客さんの口や鼻腔を汚染する前に、除外するという非常に地味な仕事が根幹だと私は考えています。

実際、私がこれまで仕事上接触した業界の人でこの鑑識に有能な人は、大変ワインの趣味がよく、互いに言葉のやりとりがスムーズにいきます。

しかし、そういった知識や経験を実務上積んでいない人はどうも、審美眼が貧弱、あるいはほとんど備わっておらず、カタログの文句や評論家のつけた点数などばかりに頼って、くだらない人気ワインばかり追いかけ騒ぎ、世間を扇動する傾向にあるようです。そういった人は、まず間違いなく、不良ワインなど見抜くことができません。

最近は私も驚かなくなりましたが、ワイン業界では、ワインの異常を検知できる人というのは極めて少ないのが事実です。しかも、驚くほど美しいワインを造る醸造家ですら、自分の送り出したワインの不良品を判別できないこともあるのです。

そのような観点から見れば、コルクはワインに関係する人にとって、試金石のようなものだとも言えるでしょう。これに触れたときに、ソムリエをはじめとするワイン業界人は、才能や経験、その他知識があるかどうかがわかるのです。

そしてそれによって金であること、すなわち正真正銘のソムリエであることが明らかになれば、その人には、資格や称号その他他人のくれる名誉などは無用な筈です。


なぜなら、金に金メッキは必要ないからです。


金メッキを必要とするのは、金でないものに限ります。


私がこれまで仕事上出会った有能なワイン業界人は、誰一人、(たとえ資格を持っていたとしても)名刺にそのような資格を載せてはいませんでした。同時に、そのような資格を名刺に載せている人で、有能な人に出会ったことはほとんどないと言っても過言ではありません。

話がやや逸れましたが、生き物であるワインに不良品はつきものだという観点から、私は、コルク栓はワインとソムリエにとって無くてはならないものであることを改めて認識し、ワイン産業の存続と発展のためにはソムリエとコルクが不可欠なものであるということ、スクリューキャップは第二のフィロキセラだということを私は声を大にして言いたいと思います。

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