本日のグラスワイン「昔ながらのキャンティ」 ¥945


いつもアルポルト・カフェ日本橋高島屋店をご愛顧下さいまして、まことにありがとうございます。

さて、表題のキャンティと言えば、バローロとかバルバレスコとかブルネロとかサッシカイアとかよりも有名なイタリアワインで、フィアスコと呼ばれる藁苞に入っているのが印象的です。

どうしてこんな形をしているのかと言えば、昔は瓶の品質や輸送がに問題があったらしく、途中でよく割れてしまうことがあり、それで藁で包んでいたそうです。
しかしそれも瓶が改良されたほか、ダンボールなどのクッション材ができたことなどで必要ではなくなり、今ではフィアスコ型のキャンティを見かけることはあまりなくなっています。

これは単に必要性がなくなったからだけではなく、フィアスコタイプのボトルは寝かせることもできず、異常に場所をとる(たった6本で36本分の場所を占領!)ので、格好は目立つものの実は嫌われているというのが事実です。

さらに付け加えると、フィアスコは職人の手作りなので、どうしても値段が高くなってしまうというのも理由として上げられると思います。

ところで、キャンティは主にサンジョヴェーゼという葡萄で造られています。このサンジョヴェーゼという葡萄は非常に気難しい葡萄で、それだけだと安定した品質が確保されなかったといいます。そこで、それを安定させるために白葡萄も含めた数種の葡萄をブレンドするという製法が編み出されました。

これは非常に画期的なことでありながら、同時にフランス的な美学=ワインは神や自然からの賜り物とする思想からすると、もはやワインではないということで、イタリア人からすれば気軽に楽しめる美味しいお酒でしたが、国際的には受け入れがたいワインとなっていたようです。

それが栽培や醸造その他の技術の進歩によって、サンジョヴェーゼを上手くコントロールすることができるようになり、法律も改正されてサンジョヴェーゼだけでもキャンティを造ってもよいようになりました。

イタリア人はサンジョヴェーゼをイタリアのカベルネ・ソーヴィニョンにしたかったのかも知れません。確かに似ているような気がしなくもないのは事実です。しかしながら、それは大きく異なります。

はっきり言うと、サンジョヴェーゼは熟成ができません。一応収穫量を減らして凝縮させれば、ボルドーに比べてトスカーナは温暖であることもあり、高い糖度と高いアルコールと、色素、タンニンが得られます。

しかし単に腐りにくいというだけで、時とともに深みが出てきたり、上品になってはいかないように思えます。むしろ、結構あっという間にタンニンが溶けてしまうので、どろどろとした甘みのしつこい、暗いワインになってしまいます。

そしてなんといっても気になるのが色素の量です。サンジョヴェーゼのタンニンはすぐに消えてしまうのに、色だけはなかなか落ちていきません。人間でいえば、世に出て数年で気概はヘタってしまうのに、個性や自己主張だけはなかなか削られていかないようなものです。

およそ、本当に優れたワインや人はそのあたりのバランスが絶妙なようです。むしろ、タンニンや気概よりも先に色=個性や自己主張が削られていきます。

このバランスを欠いたサンジョヴェーゼのワインが多いことの原因は、おそらく一般的な葡萄醸造学に遵って、タンニンを果皮からだけ抽出しようとしていることにあるのではないかと勝手に想像しています。

タンニンは葡萄の種にも含まれています。しかし、種から抽出されたタンニンはどうも粗く攻撃的で、飲めるようになるまで時間がかかるということからか、高級志向ですぐに評価されようとする生産者は、それを完全に除去して果皮からのみ抽出する傾向にあるようです。

それはいくつかの代表的な葡萄品種では成功しているようです。しかし、どうもサンジョヴェーゼには適さないのではないかと思うことが多々あります。

イタリア最高級ブランドワイン=ビオンディ・サンティが生み出した「ブルネロ・ディ・モンタルチーノ」の原料葡萄ブルネロはサンジョヴェーゼの改良品種です。しかし、ビオンディ・サンティのワインは、色が非常に薄い(マルサネのピノノワールに似ているほど)にも関わらず、100年以上の熟成にも耐え、時と共に品質が向上していく、それどころか時を待たねば飲めないようなものであることが証明されています。

もちろん、ブルネロとサンジョヴェーゼはもう全く異なる葡萄品種だということも言えると思いますが、少なくともサンジョヴェーゼという葡萄の歩むべき方向を示しているような気がします。

またサンジョヴェーゼについて私が大変興味深く感じたのは、単独使用で濃く造れば造るほど思いつめたような暗さを持つものになり、昔ながらの製法で色々な葡萄を混ぜると明るく華やかなものになるということです。

これは単にサンジョヴェーゼが薄められたからそう感じたのではなく、サンジョヴェーゼに相性のよい葡萄を混ぜるとサンジョヴェーゼも、またほかの葡萄も性格が変化しているように感じられたのです。

ボルドーワインではカベルネ・ソーヴィニョンを筆頭に、メルローカベルネ・フラン、マルベックなどの品種がワイナリー毎、ヴィンテージ毎の比率でブレンドされているということは、かなり多くの方がご存知だと思いますが、ボルドーワインはどのようにブレンドされても各葡萄品種の勢力バランスが変化しているというだけで、葡萄そのものの性格まで変化してはいないように思われます。しかし、キャンティで現れるブレンドは、葡萄そのものの性格まで変化しているように感じられます。

かなりマニアックな話になってきましたが、これは見過ごすことのできないサンジョヴェーゼの、ひょっとしたら最大級の特徴と言えるかもしれません。もちろん私はそんな知ったようなことを言えるほど、サンジョヴェーゼのワインもそのほかのワインも飲んでおりませんが……。

私が思うに、バルバレスコとかバローロなどよりもサンジョヴェーゼのワイン、キャンティの方が多種多様です。お店でお客様から「キャンティ」と注文されても、どういうキャンティのことなのか全く分からないので、ちょっと前はキャンティと名のつくものを4〜5種類揃えていたくらいです。

一般的にはバルバレスコバローロの単一畑ものの方が多様性はあると思われていますが、全くそんなことはありません。この手のワインは、経験の豊かな人でなければ分からない非常に微妙なものです。しかしキャンティは違います。ワインに別段興味のない方でもその違いをはっきりと感じ取れるものになっています。

もちろんバルバレスコバローロと名乗るものは葡萄品種がネッビオーロに限られており、キャンティは葡萄品種がかなり多くまで許されていることが理由であることは言うまでもありませんが、それにしてもキャンティの多様性に比べれば、ボルドーワインはもちろん、ブルゴーニュも比較になりません。私は自信をもって、世界で最も多様性のあるアペラシオンは「キャンティ」であると言えます。

そんな魅力一杯の昔ながらのキャンティをただ今グラスでご提供しています。

ぜひご賞味ください!

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