トスコ トスカーナIGT 〜名家の誇り〜
いつもアルポルトカフェ日本橋高島屋店をご愛顧下さいまして、まことにありがとうございます。
本日はバルバレスコに変わる、グラスワインのご紹介です。
ここだけの話ですが、バルバレスコは予想以上に好評で、女性お一人のお客様がご注文されることも多かったような気がします。
でもさすがにもう3カ月くらい続けていたので、このままではスタッフの勉強にもならないと思い、変更することにしました。
新しいグラスワインはバルバレスコの後でも遜色ないものでなければいけないので表題のワイン「トスコ Tosco」を選びました。
バルバレスコと似ているのは最後の「スコ」だけで、産地はトスカーナ州、葡萄品種はサンジョヴェーゼ・グロッソ=ブルネッロです。
ブルネッロと言えば、同州モンタルチーノ村の「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ Brunello di Montalcino」が有名ですが、このトスコはそのブルネッロ・ディ・モンタルチーノを生み出した「ビオンディ・サンティ家」が運営するBiondi−Santi SPAの「ヴィッラ・ポッジョ・サルヴィ Villa Poggio Salvi」というワイナリーが生産しています。
バローロでもバルバレスコでもガヴィでもキャンティでも有名な銘柄というのは、誰が作ったわけでもなく、その地域で昔から作られていたものがほとんどですが、このブルネッロ・ディ・モンタルチーノだけは、「ビオンディ・サンティ家が開発者」として公式に認められております。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの歴史についてはまた今度にするとして、とにかくこのビオンディ・サンティ家のワインは「イタリアのロマネ・コンティ」とか「フローレンスシエナのシャトー・ラトゥール」と呼ばれるほどの高級ブランドとなっており、イタリアの大統領府主催晩餐会の指定ワインとされ、市場価格でも最も高額なイタリアワインとなっています。
でも、このワイン、実に扱いにくいというのが正直なところです。このワインのタグにも書かれておりますが、ソムリエの教科書でも、このワインは「8時間以上前に抜栓しなければならない」と書いてあるからです。
もし飲む直前に抜栓をしたらどうなるのか? それはほとんど「毛虫を口に含んだような」おぞましい味がすると言いましょう。実際私はずいぶん前にこのワインを買って、試しに栓を抜いた直後に飲んでみました。
いや、飲もうとしたのだけれども、一応濁ってはいなかったけれども色合いから疑わしく、香りも刺々しくて、まだ若いワインだったのですが、保管状態が良くなかったか何かですでに腐っているのではないかと思い、口に含むのを躊躇いました。
案の定、口に含むと強烈な酸、それは不良ワインのレベルではないほど凄まじい、錆びた鉄のような酸に舌が痺れ、吐き出してしまいました。
でも、信じがたいことに、このワインはそこからゆっくりと浄化されていき、決して大げさではなく、見た目も輝きを持ったルビーレッドになっていき、香りはどんどん清々しく、混じりけのないものになっていきました。
また味わいもだんだんと芯のようなものがでてきて、ピークを迎えた8時間目にはほとんど無重力状態に到達しました。その変化はまさに毛虫が蝶になって軽やかに舞うようでした。
それから随分時間が経っておりますが、未だに私はその時の感動が忘れられず、我が家のワインセラーにはこのワインが何本も入っているという始末。しかも、とっておきのワインなのでいつ誰と飲めばよいのかそれすら覚束ないといった状態です。
さて、それほど神秘的なビオンディ・サンティのブルネッロ・ディ・モンタルチーノですが、高額であるということと、その8時間前に抜栓をしなければ飲めたものではない、というか8時間くらいかけてじっくりと鑑賞せねば真価に触れることはできないということから、私は一度しかお客様ご提供したことはなく、ご注文をお断りしたことも何度かあります。
恐らく、以上のようなことから、ビオンディ・サンティのワインというのは、レストランからは敬遠され、真価を知らない人からは不評を買い、その価格にも疑問を投げつけられていたというわけです。
ところで一体全体、どうしてビオンディ・サンティはそんな扱いにくいワインを造るのか? ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのほかの生産者のワインは、抜栓してすぐに飲めるようなものが多いのに・・・
それはビオンディ・サンティ家は自分たちの父祖が研究に研究を重ねてたどり着いた製法、昔からの伝統的な醸造法と、さらにスロベニア産大樽で長期熟成とかそういった製法を、本家本元として守り続けているからです。
この一家の世界的な成功により、モンタルチーノ村はワイナリーが軒を連ねるようになり、いま現在ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの生産者は300くらいあると思われますが、おととしだったか、大手ワイナリーによる偽装問題が発覚してニュースになりました。
ワインも嗜好品であり、資本主義が介入していることから、時代に合わせたもの、より売れるようなものに変化していくのですが、それが行き過ぎて、異なる産地や法定品種以外の葡萄が使用されてしまったわけです。没収された数は数百万本にのぼると言われております。
しかし、どれだけ時代が変わり、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのスタイルが変わっていっても、その原型=プラトン哲学でいうところのイデアとも言えるビオンディ・サンティ家の製法スタイルは守り続けられなければなりません。
それは完璧な模範であり、イタリアワインのみならず世界最高峰のワインだからです。
さて、前置きが長くなりすぎましたが、今日ご紹介する「トスコ」は要するに、ビオンディ・サンティ家が時代離れした自分たちのブランドとは別のブランドで、近代設備も用い、より現代の嗜好にあった味も価格も親しみやすいワインを造ったということです。
醸造家のルカ・ベリンガルディ氏はよく日本にも来ていて、私も数度会っているのですが、まだ若い美男子であるのに、非常に熱意と誇りを持ってビオンディ・サンティの裏書のあるワインを造っているのを感じました。
まあ飲んでいただけば、こんな長たらしい蘊蓄など全く必要がないことは即座におわかりいただけますが、単に美味しいというだけでなく、それは非常に奥ゆかしく、誇りに満ち、滴るような美しさがあります。
是非、お試しください。
グラス ¥1365
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